被リンクによるSEOは終わったという誤解と重要である理由
「被リンクはもう終わった。」
という言葉を聞いたことのある人は多いと思います。
私は商売柄色々なSEOやWebマーケティングのブログを読みます。そこではうんざりするほどこの言葉が書かれています。
また、クライアントからも
「被リンクってもう関係ないんですよね?」
という確認のような質問を受ける時があります。
「そんなことはないんですよ」
とお答えしています。その後、クライアントが希望するならば、「なぜ被リンクは重要なのか」についてお話をすることにしています。この記事ではクライアントにお話する内容についてここでは書こうと思います。
1.被リンクはどのように誤解されているか
1−1.被リンクではなくオーサーオーソリティをGoogleは評価するという誤解
1−1−1.誤解が生まれた理由
オーサーオーソリティとは著者(オーサー:author)の権威(オーソリティ:authority)のことです。
著者が信頼に足る人物かどうかを判定して、その人物の信頼度を検索順位に加味しようという考え方です。
例えば、タラバガニのレシピの記事について考えてみましょう。どこかの誰かが書いた記事よりも、有名な料亭の板前として名前が通っている人の記事を評価しようという指標です。
Google社のスポークスマンであるマット・カッツ氏の2014年5月5日の発言がありました。
「Will backlinks lose their importance in ranking?」
被リンクの順位計算における重要性は失われるのか?というタイトルの動画です。
この動画の中において、その道の専門家が書いたものなのかを順位計算の指標を取り入れることで、Googleはよりそのページの専門性を理解する助けになる、ということが語られています。全文日本語訳はこちらを参照。
この動画に取り上げられた発言の中身を実際に自分で確かめることなく、どこかのブログなどで誤った紹介がなされたのが拡散しました。その結果、被リンクはもういらなくなったという誤解が生まれたのです。
あくまでオーサーオーソリティは順位計算の中の新たな指標として追加されたに過ぎません。オーサーオーソリティが被リンクに取って代わったという誤解が生じたのですね。
1−1−2.オーサーオーソリティは実際は機能していない可能性が高い
これは誤解であるどころか、むしろまったくもってただの間違いであるといえます。
その道の専門家か否かというオーサーオーソリティをGoogleが把握するとても野心的な試みがGoogle+でした。
GoogleにはFacebookに対抗するという意図は多分あったでしょう。
しかし、検索エンジンの運営会社のGoogle社として重要なことはGoogle+という実名制のコミュニティを運営することで、個々の人物がどのような分野におけるオーソリティであるかを詳細に把握したかったのです。
- Google+をWeb運営者の大多数が使用するようになり
- Google+の著者情報が個々のWebサイトのページに埋め込まれる
この2つが実現すれば非常に高い精度で著者情報を利用して、専門家・その問題に詳しい人が書いたと考えられるページをGoogleが把握できるようになるはずでした。
しかし、この試みは挫折しました。大半のWebサイトは著者情報を埋め込んでくれなかったし、Google+を使うユーザー数もそれほど増えませんでした。結果として、オーサーオーソリティをつかむための決定的な方法を、いまだにGoogleは持つに至っていないのです。
1−2.被リンクがなくてもページの内容から価値を評価できるという誤解
ページ内部の情報だけを判断して、どれだけのそのページの情報に価値があるかをGoogleは把握できるという誤解もあります。
ページの内部の情報だけで価値を測る方法は限られています。Googleは文脈の意味を今日になっても把握するには至っていません。現在の技術では小説などのストーリーを理解することはまったくもって不可能なのです。それゆえに共起語を用いて、検索キーワードと、個々のページの適合度を測るといった手法しかありません。
共起語とはとあるキーワードが出現するページにのみ、特徴的に現れるキーワードを指します。
例えば「カレーライス」というキーワードが含まれているページには、「スパイス」「ルウ」「インド」「給食」といったキーワードが頻出します。しかし、一般的にこのようなキーワードはあまり使われません。
「スパイス」「ルウ」「インド」「給食」といったキーワードが含まれるページは、カレーについて高い専門性があるとGoogleは判断していると考えられます。この種のキーワードを共起語と呼びます。
このような共起語の有無、どれくらい使われているのか?が判断基準になると考えられます。
しかし、これだけでは不十分なのです。
タラバガニ1匹を殻ごとキッチンタイマーで叩いてつぶします。
つぶしたタラバガニを電子レンジに移します。
生クリーム200cc・卵2個・砂糖大さじ5・オリーブオイル300cc・パン粉100gを加え、湯煎しながらトロリと角が立つまでよく混ぜます。一口大に丸めて串に刺し40度の油で120分揚げます。
皿に盛って青のり、ハバネロソース、細かくちぎったキッチンペーパーをたっぷりふりかけて完成です。
こんな人間が見れば明らかに間違っている文章であったとしても、共起語という観点のみでは役に立つ文章であるかを判断することができないのです。実際に「タラバガニ ハバネロソース」で検索してみてください。検索上位に上記の文章がヒットするはずです。上記文書の出典:ナチュラルリンクを獲得する基本的な考え方
1−3.被リンクと順位は関係ないという誤解
被リンクと検索順位に関係はないというようなことが書かれている有名なブログがあります。
しかし、該当する記事にリンクが全くないにもかかわらず、ビッグキーワードで検索順位が上がっているからというのが論拠です。
しかし、これは間違いです。
いくらいい内容が書いてあったとしても、内容の正否をGoogleは判断できません。
ページ内に含まれる共起語を分析した結果として、「この文章はよく書けているようだ」と判断したとしても、Googleはそれだけではなかなか上位表示させません。
内容の正否が判断できないので、判断を留保する可能性が高いのです。
ところが、被リンクがつくことで判断が変わってきます。該当のページにリンクがついていなくてもよいのです。
そのWebサイト全体での中の様々なページにある程度リンクされていればいいのです
「このWebサイトに書いてあることはあながち嘘ではあるまい」
Webサイトにリンクが集まっていると上記のように判断されると考えられます。被リンクがまったくないページについても、疑いの目が向けられることなく内容の評価がなされ、しかるべき順位に上がってくると考えられます。
(※情報が役に立つかの判断は、実は被リンクだけではありません。私のこれまでの知見からはわかっているのですが今回は割愛します。要因として被リンクは大きいということです)
被リンクがまったくゼロで、競合が多いキーワードで上位表示することはほぼ無理といって差し支えありません。
1−4.被リンクが増えるほどクローラーが巡回してきて順位が上がるという誤解
「クローラー」とは検索エンジンの仕組みの一部です。
個々のWebサイトのページに訪問して内容を取得するシステムのことです。このシステムがWebサイトを訪問して、内容を取得することを「クローリング」と呼びます。
Googleのクローリング頻度を上げれば検索順位が上がる。
クローリング頻度を上げるために被リンクを増やす。
ということが書いてあるSEOの記事がありますがこれはまったくの嘘です。
クローラーが多く訪問するほど順位が上がるということはありません。
確かに被リンクが増えると、クローラーが回ってくる頻度が上がるかもしれません。
しかし、頻度と検索順位は関係ありません。
本来はクローリングの頻度は低ければ低いほど、様々なコンピューターの資源の消費が少なく済むのです。だからむやみやたらにクローリングするのではなく、適切なタイミングでクローリングすることをGoogleは考えています。
平均1週間に1回しか更新されないページと、平均10秒に1回程度更新されるページではクローリング頻度を変えて当然で、実際に変えています。
また、内容の即時性が必要なページと、まったく不必要なページでは頻度が変わります。
歴史上の人物の経歴をまとめたページと、パソコンの新製品を紹介するページでは必要な更新頻度が違います。
Googleはこの原則によってクローリングの頻度を基本的には決めているのです。
(実際はサイトの評価が上がると、クローリングの頻度が上がることもあります。しかし、数千ページ以下程度の一般のWebサイトにとってはほとんど関係ないことがらなので、ここでは割愛します)
もう一度言います。
クローリング頻度と検索順位は関係ありません。
だからクローリングを頻度を上げるために被リンクを増やすという考え方は的はずれなのです。
1−5.被リンクされるとGoogleからペナルティを受けるという誤解
最近よく聞かれる誤解です。
被リンクには2つの種類があるのですが、これをごっちゃにしているのです。
- 検索順位を不当に操作して上昇させるために設置されたリンク
- リンク先のページを紹介したいために設置したリンク
1.の被リンクがあるとペナルティを受けるわけです。2.のような自然なリンクの価値はむしろ上がっているのです。
かつて、検索順位を上げるために1.のようなリンクが多用されました。その結果、1.の施策を行った多くの役にたたないページが検索結果に表示されるようになりました。
これがユーザーの利便性を損なうようになったため、1.の施策を行ったWebサイトはペナルティを課されて、順位を大きく下げられたわけです。
今日では1.の不当なリンクと、2の自然なリンクをGoogleが判別する能力が著しく進歩し、結果として2.のリンクについては逆に価値が上がっているのです。
2.被リンクの重要性
書いたように被リンクがゼロのWebサイトは、Googleが評価の付け方が難しいことがまずは挙げられます。
ですので、少数でかまわないので確かなリンクが必要なわけです。
企業が運営するWebサイトであれば求人を出したり、加盟業界団体などの公式Webサイトからリンクされたりするでしょう。
こういうリンクはGoogleから信頼されているWebサイトからのリンクであるため、価値の高いリンクであるわけです。
どこの誰がやっているかわからない、嘘くさいWebサイトから100箇所リンクされるよりも、確かな素性からのリンクが数箇所からでも得ることが重要です。
たった数箇所であってもこのWebサイトは信頼に足るものであるとGoogleに認識させることができるわけです。
むしろ被リンクの重要性は増しているといえるでしょう。
最低限の数でかまわないので信頼できるリンクがありさえすれば、そこから先はページの中の情報の価値を高めることで、検索順位を上げていくことができます。最低限の信頼できるリンクは、Webサイトを検索エンジンに向かって打ち上げる発射台のようなものなのです。
いくら素晴らしいロケットがあっても、発射台がなければ飛ばせないのです。コンテンツさえ良ければ検索順位は上がると最近はよくいわれますが、実際はそうではないのです。