失敗したくない人のためのホームページ制作会社の見つけ方・選び方
初めてホームページを作る。
あるいは今のホームページを制作してくれた会社には、もう頼みたくないといった場合にも新しく選定しなければなりません。
しかし、どのようにして制作会社を見つければいいのか、選べばいいのかは非常に難しいのが現実です。
私も過去には制作会社選びを何度も失敗した経験を持っています。
納期が大きく遅れたり、予算がとんでもなく超過したり、要望が正しく伝わらず進捗管理そのものを細かく行わなくてはならなくなってしまった・・・、といったケースを経験しています。
また、私がコンサルをしているクライアントでも、ホームページ制作会社の選定を失敗してひどい目にあったというケースも見ています。
この記事では、どのようにすれば満足のいくホームページを作ってくれる会社を見つけて、選ぶことができるのか?について私のこれまでの経験を踏まえて書いてみます。もちろんこの通りに行えば成功するとは限らないのですが、失敗する確率を大きく減らすことができるはずです。
1.ホームページ制作会社を選ぶ上で絶対やってはいけないこと
「政治で決めないこと」
これがとてもとても重要です。よくある失敗パターンですが、
「今回のリニューアルは社長の友人の会社でやることになってます。テレビCMをいっぱい制作している会社なので、とっても素晴らしいホームページを作ってくれるはずです。」
といった場合ですね。私が集客のコンサルしている場合には、この決定方法は絶対に駄目だとクライアントを説得しようとしますがうまくいきません。そうして案の定、失敗してひどい目にあうのです。
まあ、現場の担当者としては、命令が降りてきたら従うのが無難だからしかたありません。社長が反対する中で、別の会社を選定して失敗したら進退に関わるような事態になりかねません。そんなことになるぐらいならば、100%失敗すると予測できたとしても意向に従った方がよいわけです。
これを読まれたトップの方や、決定権のある方へホームページの制作に対して政治力を発揮しないことを強くお勧めします。
2.失敗しないための選定過程
2−1.何のためにホームページを作る・リニューアルするのかを明確にする
これが失敗しないための重要なポイントです。
目的が明確でないと失敗する確率が非常に高まります。
ホームページの制作に関わる利害関係者が社内に多くいる場合、それらの全ての人々にとっての共通認識を持っておかなければなりません。
「ホームページ経由での受注を月間5件獲得し、昨年対比売上120%を達成する」
「オウンドメディアとして認知を得るために、月間100万PVを獲得する」
「スマートフォン対応していないことによる機会ロスの減少。スマートフォンからの購入数を40%増加させる」
本当はこのように数値目標があるといいのです。
しかし、ホームページからの集客について分析をしていないケースが大半だと思います。その場合は、
「業界では有名な会社であるというイメージを伝えることにより人材採用の促進をはかりたい」
「メニューの美味しさを表現しPRして来店客のアップにつなげたい」
といった目的をせめて設定しましょう。
目的はもちろん一つでなくても構いません。しかし、このような一言で表現できる目的を持つことが大切です。
「会社パンフレットとしての機能が果たせるホームページを作る」
これでもまったく問題ないでしょう。いまだにホームページがないという会社であって、インターネットからの引き合いなどを期待しないのであれば目的となりえます。
もし、明確な目的が設定できないというのであれば、ホームページを作ることそのものを再考すべきではないでしょうか。作る必要はないのかもしれません。
2−2.発注要件を固める
下記の2−2−1〜2−2−10をまとめて文書化します。
A4用紙で1枚程度の資料であっても、下記の要件がまとまっていればそれなりの見積精度が得られるはずです。
見積要件があいまいになればなるほど、見積が出来上がってきても前提条件が異なってしまうため、相見積しても意味がないことになってしまいます。
例えていえば
「家族4人が住める家が欲しい。」
とだけ見積依頼をしたら、マンションでもいいし、豪邸の一軒家もあれば、大都市近郊の便利な街かもしれないし、不便な場所かも知れない。そのようなあいまいな条件で見積を作っても見積の意味をなしません。
でも、ホームページの発注ではこのようなあいまいな発注がまかり通っているのが現実です。これが発注側と制作会社側のいずれも不幸にしている大きな原因であるわけです。
2−2−1.目的を明記する
2−2.でまとめたホームページ制作の目的を書きます。それによって単に「いわれたように作ればいい」というのではなく、目標を達成するためにはどうするのがよいのか?を制作会社側が考えて提案してくれるでしょう。
2−2−2.イメージに近いホームページを見つける
こんなページが作れたら理想だと思うイメージに近いホームページを見つけます。
一つである必要はありません。いくつかあってもかまいません。
ホームページを列挙して、
「なぜ、そのホームページがいいと思って選定したのか?」
を書きます。その想いの部分を制作会社が汲むのです。単にこのページがいいというように挙げるだけだと、制作者側は、
「このページはユーザビリティ(使い勝手)が悪いけど、このような使い勝手がいいっていうことなのかな?」
と思ったりします。でも、理由として
「来訪者に対して親しみを感じさせるデザインだから」
と書いておけば、
「使い勝手については参考にしないで、デザインについては参考にしよう。」
ということがわかります。
2−2−3.制作する概算のページ数を確定する
10ページ作るのと500ページ作るのでは単純計算で50倍金額が異なってくるといったように、制作するページ数がとても重要です。
こんなページが作れたら理想だと思うページのイメージに近いホームページを見つけます。そのホームページを見て何ページあるのかを確認します。
ただし、ホームページ内にブログがある場合は、何百ページあったとしても別にカウントする必要はありません。
なぜなら、ブログのページは制作会社が作るのではなく、ホームページの運営者が作るためです。
ブログが必要な場合は、ブログが必要ということを発注要件に盛り込んでおきましょう。
2−2−4.ネット販売や不動産検索、空室予約といった仕組みが必要か確定する
これらが必要な場合は単なるホームページの制作とはいえない案件になります。
プログラミングが必要になってきますし、どこまでの利便性を求めるかによって金額が大きく変わってきます。
最低でもこれらの機能を実現するためには30万円程度、高度な機能を要求すると数千万円もかかることもあります。
このような仕組みが必要な場合には、単なるホームページ制作会社では手に負えないことが多いといえます。
まずは、どのような機能が必要であるかを時間をかけて洗い出して発注要件を固める必要があります。しかし、この方法は一般の担当者には難しく、専門のコンサルタントの支援を依頼するといった対策が必要になります。
対策についてはいくら書いても足りないのでこの記事では割愛します。このような仕組みが必要な場合は、素人が独力で会社を選定して発注するのはとても難しいというのが結論です。
2−2−5.文字原稿・写真・イラスト・ロゴ支給をどこまで行うか
- 文字原稿は自分で書くか?それとも制作会社にライティングを依頼するか?
- ホームページでの使用にたえるきれいな写真はあるか?カメラマンを雇う必要はあるか?
- 商品説明などに使うイラストはあるか?作成してもらう必要はあるか?作成するなら何点作成してもらう必要があるか?
- 会社のロゴはあるか?ないならば作成してもらう必要があるか?
この要件を決めておきましょう。ライティングが必要であれば、ライティングができる会社であることが必須ですし、カメラマンを使うことも、イラストやロゴが得意といった要件が必要になってくるかもしれません。
2−2−6.スマホ対応の有無・対応方法を決定する
- スマホ対応が不要なケース
単に会社案内パンフレットとして機能すればいいのであれば、スマホ対応は不要でしょう。
また、売上を取りたいといった場合でも、BtoBのビジネスなどで閲覧者がそれほど多くなく、じっくり見るような商材をあつかっているような場合はスマホ対応の必要性は低くなります。
基本的にはスマホはパソコンで見ることができるページについては、それなりに閲覧できるように作られているので、このようなケースであれば無理してスマホに対応する必要はありません。 - スマホ対応が必要なケース
ホームページから積極的に売上を取りたいということになると、スマホユーザーにはスマホなりの見せ方をすることが望ましいといえます。この場合の対応は以下の2つがあります。
1)レスポンシブウェブデザイン
スマホとパソコンで表示する情報を同一にしておき、スマホで見た時はスマホに適したレイアウトに、パソコンで見た時にはパソコンに適したレイアウトにするという方法です。今はこれが主流になりつつあります。パソコン版のみの場合に比べると、6割増し程度のコストが必要になります。
2)スマホとパソコンで完全に別ページ
閲覧者のニーズがスマホとパソコンでは全く異なる場合はこれがもっともよいアプローチになります。
極端な例ですがホテルのホームページを作るとします。パソコンで閲覧する人は様々な情報を知りたいニーズがあるでしょうが、スマホの場合だと空室予約だけが必要なニーズがほとんどでしょう。こんな場合はパソコンはホテルの概要や周辺の観光情報、求人など様々な情報へアクセスできるようにし、スマホは空室予約だけでいいかもしれません。
完全に別ページにする場合は、単純計算だと2倍の金額になります。
2−2−7.対応するブラウザを決定しましょう
Windowsのパソコンには標準でインストールされているInternet Explorer:通称IEというインターネットの閲覧ソフト(ブラウザ)があります。
このバージョンが古い場合、他のブラウザでは正常に見えるのにレイアウトがガチャガチャにくずれてしまうといった深刻な現象が多発します。
それを回避するためにIEの古いバージョン(古くなればなるほど対応が難しい)のためだけの作業が発生します。
制作コストを上げたくないのであればIEは9以上対応でよしとしておきましょう。。日本国内でのブラウザの2015年12月時点のシェアでは、IE8は1.46%となっています。これ以下を捨てればコストは大きく変わってきます。
2−2−8.デザイン案の数を決定する
本格的な制作に入る前に、
「どれが一番気に入りましたか?」
というように制作会社はデザイン案を複数案提示するのが普通です。
このデザイン案を多く作らせれば作らせるほど当然のことながらコストがかさみます。特にこのデザイン案はゼロから発想しなければならないので、コストがかさむポイントとなります。
一般企業のホームページの場合3パターンぐらいにするのが一般的です。
制作予算が数百万、あるいはホームページから月商ベースで数百万以上の売上を想定しているような場合は、5パターン以上としても良いかと思います。
2−2−9.WordpressといったCMS(コンテンツ管理システム)の導入有無を決定する
現在はWordpressといったコンテンツ管理システムを使ってホームページを作るのが主流です。
HTMLという言語をベタ打ちで書くことは少なくなりました。CMSを使うメリットは、最初は導入のための作業の手間がかかるのですが、その後の更新が非常に楽になることにあります。
ホームページは作っておしまいではなくその後更新していくのが普通なので、CMSを導入することが望ましいです。ホームページができてから導入しようとするとほぼ作り直しになりますので、最初の制作時に行わなければなりません。
もし、会社案内としての機能しか望まないのであればCMSは不要です。
2−2−10.納期を決定する
制作担当者の手が空いている場合は、遊ばせておくぐらいなら赤字でもいいから受注しようってこともありえます。
この場合は見積の段階から非常に安い金額を提示してきたりします。
納期に大きく余裕があると安くなる場合もあります。
なぜかというと、担当者のスケジュールがそれほどつまっていない場合の空き時間を活用できるので、安くてもいいという判断になる可能性もあるのです。
もう一つの可能性ですが、給与も安いがスキルも低い担当者をあてる場合があります。スキルの低い担当者に制作させる場合は時間がかかったり、場合によってはやり直しになるリスクがあります。
納期に大きく余裕があれば、最悪うまくいかなくてもベテランがその箇所をやり直したり、修正したりすることができます(このようにスキルのある人が、最終的に自分で業務を引き取ることを、この業界ではよく「巻き取る」なんていいますね)。
また、急ぎの案件だと余裕がないから無理ですが、スキルの足りない担当者の教育を兼ねて、教えながらやるという場合もあります。
なんにせよ納期に余裕があると制作会社側としては助かります。
この逆が特急料金で、これは同じ理由によって高くなることはおわかりいただけるでしょう。
20ページ程度でデザイン案3案・文字原稿・写真・イラストを支給、レスポンシブ対応の場合なら、
- 3週間程度だと超特急料金(失敗する可能性が高くなるのでお勧めしません)
- 5週間程度の納期で特急料金
- 7週間で普通
- 12週間でのんびり
といったところが目安かと思います。
あと、これは余談なのですが、納期に大きく影響するのはホームページ制作会社の作業スピードだけではありません。発注側の確認待ちや、文字原稿の提出待ちといった期間の影響を大きく受けます。これが遅くなると、その分だけ納期が遅れます。
発注側が確認せず1日放置していたことを、制作側が作業スピードのアップによって埋め合わせるのはとても大変なのです。
2−3.制作会社の候補を選定する
候補を見つけるための方法はいくつかあります。
2−3−1.友人・知人から評判の良い会社を紹介してもらう
自社のホームページを作った制作会社がとても良くて気に入っている。ということで紹介してくれたケースであれば、かなりの確率でハズレを回避することができるでしょう。
私であっても会社を人に紹介するときは、自分のメンツがかかっていますのでいい加減な会社を紹介するわけにはいきません。信用できる友人・知人から紹介してもらうというのはかなり手堅い方法です。
2−3−2.理想と思うイメージに近いホームページを作った会社を選定する
2−2−2で「イメージに近いホームページを見つける」と書きました。そのホームページの運営者に、
「御社のホームページが大変素晴らしく、当社でも是非このようなホームページを作りたいと考えております。もしよろしければ、ホームページを制作した会社様をお教えいただけませんでしょうか?」
と問い合わせてみましょう。教えてくれる場合が多いと思います。
2−3−3.インターネット検索で探してみる
自分の会社が水戸にあるのであれば「ホームページ制作 水戸」などと検索してみて、近隣の制作会社を探してみるという方法もあります。
そして制作会社のホームページを見れば、過去の実績が載っていると思います。実績を見て「このようなページが作れるなら任せてもいい」と思える会社に問合わせしてみるのは一つの方法です。
もう一つの探し方としては、業種名で探してみる方法があります。
「飲食店 ホームページ制作」
などと検索してみるという方法です。特定の業種の案件を数多くこなしている制作会社であれば、ビジネスの急所をつかんでいる場合が多いです。そのためビジネスの成功のために何が必要か?ということがよくわかっていることが多く、企画や制作プロセスがスムーズになりコストを抑えられ、かつ成功につながる可能性は高くなります。
2−4.制作会社に見積を依頼する
前述のプロセスで作成した発注要件を、選定した業者に見せて見積を依頼します。
対面で話ができるのが望ましいです。
こちらの要望をくんで、適切に理解してくれるか?を判断しましょう。こちらの要望をよく理解してくれない、話を聞いてくれない、話している内容がよくわからない担当者であればこの時点でダメです。その会社に発注したら多分失敗します。
あまり多くの会社に相見積を取ることは避けましょう。
まずは、見積依頼段階でできる限り厳選するべきです。候補を選定して甲乙つけがたいというところだけにすべきです。
なぜならば、見積を依頼した後で、制作会社から様々な問合わせが来る可能性があり、これに丁寧に回答するのは結構たいへんだからというのが一つの理由。あとは、
「3社コンペです」
といっておけば、「確率3分の1か!頑張れば取れるな」ということで独自性のある提案を作ってくれる可能性が高まるのがもう一つの理由です。
ところが10社コンペです。といった場合では、まあ頑張っても仕方ない適当にやっておこう。となります。これは制作の前段階からすでに失敗の種をまく元となります。
実際は10社コンペなのに3社コンペですと嘘をつくという方法もありますがやめましょう。嘘をつくことはよくありませんし、ホームページ制作者は意外に横のつながりがあったりするので、嘘がバレて信頼を失うこともないとはいえません。
あと、重要なことですがデザインが気に入ってその会社を候補として選定したという場合は、同じデザイナーが担当してくれるかを必ず確認しましょう。デザイン力というものは会社にあるわけではなく、デザイナー個々人に属しているものだからです。
2−5.見積・提案内容を判断する
見積は金額だけで判断しないようにしましょう。
できれば担当者から直接話しを聞いて、目的を達成するための提案についての詳細を聞くべきです。
金額がかなり高くても、目標を十二分に達成してくれるという確信が持てる制作会社であれば、その提案には検討の価値があります。
不安なこと、聞きたいこと、聞きにくいこと、何でも尋ねてみてください。
そして、「違和感」を大切にしてください。ということを強調したいと思います。
都合の悪いことをいわれた時に、人間は饒舌になったり、ちょっと不機嫌になったり、口ごもったり、ごまかそうとしたりすることがあります。そのようなときに感じる違和感は重要視すべきだと私は考えています。
この種の違和感があったら、制作が進捗していくと違和感がだんだん増幅してくることが多くあります。
その時はもう取り返しのつかないことになっているかもしれません。
2−6.断る勇気を持つ
提案がどれもしっくりこない。といった場合は断る勇気を持たなくてはなりません。
特に知人の紹介といった場合は断ることが心情的に難しいかもしれないのですが、そこは成功のために割りきらねばなりません。
3.終わりに
このステップを踏んだとしても、確実に成功するとは限りませんが失敗する確率を大きく減らすことができると、私は考えています。
一見面倒に見えるかもしれません。しかし、この作業時間の中のほとんどは何も考えずに適当に制作会社に発注しても発生しうる内容です。発注してから作業するか?発注前に作業するか?の違いに過ぎないといえます。
どうせやるなら発注前にやったほうが、発注側にとっても制作側にとってもお互い幸せになるので、先にやっておきましょうってことです。