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Amazon Video Direct(アマゾンビデオダイレクト)がスタート!YouTubeよりも、Netflixが危ない?

作成日:2016.05.11

最終更新日:2016.05.11

カテゴリー:Tips

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Amazonは5月10日、新たな動画ストリーミングサービスとしてAmazon Video Direct(以下AVD)を発表しました。
クリエイターが独自の動画コンテンツを投稿できることから、「YouTubeに対抗したサービスである」と国内外で話題になっています。

しかし、あくまで「映像のプロ」に向けたサービスであるという点から、NetflixやYouTube REDのような有料動画配信サービスの競合であるとの見方もできます。

なぜAVDがYouTubeよりもNetflixなどの有料サービスの脅威となり得るのか、そのサービスの特徴と、Amazonの狙いを整理してみましょう。

1.Amazon Video Directの仕組み

Amazonでのビデオサービスは、以下の2つに大別されます。

1.一般無料会員向けサービス
映画一本ごと、ドラマ一話ごとに料金を払い、コンテンツをレンタルもしくは購入できる。予告編などは無料視聴可。
2.Amazonプライム会員向けサービス
年会費3900円でプライム会員になると、映画やドラマが見放題になる。
※米国では「Streaming Partners Program」と呼ばれるプライム会員向けサービスがありますが、日本ではまだ利用できません。
このサービスは、ケーブルテレビで配信されているような番組を視聴できるというものです。プライム会員年会費とは別に、見たい番組に対しての視聴料を払わなければなりません。

今回のAVDでは、上記のAmazonビデオサービスを通して、クリエイターたちが自分のコンテンツを配信できるようになります。

さらに、クリエイターは以下の4つの配信方法を選択、または組み合わせることにより、収入を得ることができます。

1.無料配信
広告が掲載されるので、広告料の55%が収入となる。(YouTubeと同じ仕組み)
2.Amazon上でレンタル、販売
売り上げの50%がクリエイターの収入になる。
3.プライム会員向けの配信
プライム会員による視聴時間に応じて収入が入る。(1時間につき15セント)
4.Streaming Partners Program
このサービスでのみ配信するのであれば、視聴料を取ることができる。
2016年5月10日現在、日本では未導入。

2.AVDに期待できる効果

AVDが今までの動画配信サービスと違うのは、「無名のプロクリエイターが、広告に頼らない収入を得ることができる」という点です。
AVDではプライム会員向けに、広告がないコンテンツを配信できます。広告料などではなく、純粋にコンテンツの人気(視聴時間)に応じて収入を得ることができるのです。

今までは、クリエイターが動画コンテンツで収入を得るためには、YouTubeなどで広告収入を得る手法が一般的でした。
広告無しでコンテンツを売るとすれば、Netflixやhuluなどと直接交渉しなければなりません。しかし、すでに評価の高いコンテンツでない限りは、あまり現実的な方法とはいえないでしょう。

これらに比べ、AVDは「有名ではないが、面白いコンテンツを作れるクリエイター」にうってつけのメディアとなり得るのです。

2-1.クリエイターが期待できるメリット

クリエイターが期待できるメリットは、端的に述べて以下の2点です。

  • 作品を容易に宣伝・販売できる
  • 広告を挟まずに作品を発表できる

AVDはYouTubeなどと同様に広告収入を得ることもできますが、同時に作品を販売したり、有料会員にのみ広告のないコンテンツを配信したりすることもできます。
無料と有料を使い分けることによって、「ダイジェスト版を広告付きで無料配信し、本編は広告なしで有料配信する」などの戦略立てが可能となるでしょう。
うまく組み合わせることができれば、映画館や企業などに営業をかけるよりも、はるかに容易に動画を宣伝・販売できるようになるはずです。

また、クリエイターにとっては、広告を挟まずに作品を販売できることは大きな魅力ではないでしょうか。
自分の作品の途中で広告が自動再生されたり、一部分に広告が被さった状態で作品が閲覧されることは、かなり大きなストレスだといえます。
無名のクリエイターがインターネットで作品を発表して収入を得ようとしたとき、これまでは広告を挟まざるを得ない状況でした。
しかしAVDのシステムであれば、長編の映画なども広告再生を挟むことなく配信することができるのです。

2-2.ユーザーが期待できるメリット

一方、ユーザーが期待できるメリットは、以下の2点です。

  • 広告に邪魔をされずに動画を閲覧できる
  • 良質な動画を安価に大量に閲覧できる

広告が排除されることは、ユーザーにとっても歓迎すべきことです。
インターネットで無料動画を閲覧していたら、途中で広告再生が始まってガッカリしたことがある人も多いのではないでしょうか。

また、AVDが動画発表のプラットフォフォームとしてメジャーになれば、無名の、しかし実力のあるクリエイターが作成した良質なコンテンツが増えていくだろうと予測されます。
結果として、良質な動画を安価に大量に閲覧できるサービスになりうるのです。

とくに日本では、アマゾンプライムサービスが非常に安価です。
アメリカのアマゾンプライムサービスは月間およそ9ドルですが、日本国内であれば月間325円(2016年5月現在)で利用できます。
アマゾンプライムサービスの他サービスも利用できて、なおかつ動画が閲覧できるとなれば、ユーザーにとっては魅力的な話ではないでしょうか。

ただし、これはAVDに実力のあるクリエイターが集まり、良質なコンテンツが増強されなければ実現しません。

2-3.Amazonの狙いとは?

それでは、サービスをリリースしたAmazonの狙いとはなんなのでしょうか?
現段階では、以下の2点が考えられます。

  • クリエイターを集めて独自コンテンツを増強する
  • プライム会員を増加させる

Amazonが目指しているのは、「プライム会員向け」の配信方法を利用して、無名クリエイターを集めることであると考えられます。
無名で実力のあるクリエイターが集まれば、自社で企画制作をしなくても、良質な独自コンテンツを増強できることになります。
また、良質なコンテンツが集まれば、そのためにプライム会員に登録するユーザーも獲得できるでしょう。

3.誰にとっての脅威になる?

「クリエイターがより簡単にコンテンツを視聴者に届けられるように、視聴者がより簡単に良質なコンテンツを見つけられるように」することがこのサービスの目的だと、AmazonビデオのVPであるJim Freemanは語ります。

人気さえ出れば確実にお金がもらえるシステムなので、無名クリエイターたちも喜んで映像を提供するでしょう。Amazon側としても、他のどこでも見ることができないユニークな作品を集めることができるので、プライム会員の数を伸ばすための地盤を固めることができるのです。

AVDが「YouTubeへの対抗」であるとして報じている記事をよく見かけます。
確かに「無料配信」「広告収入」という単語だけに注目すると、YouTubeの競合になりそうなサービスであるように思われます。
しかし、無料動画ストリーミング市場をほぼ独占しているYouTubeに正面から対抗するのは、いくらAmazonでも無謀です。新サービスの狙いは他にあると考える方が自然でしょう。

先程も述べたようにAVDがプライム会員向けのコンテンツを増強するためのものだとすると、YouTubeのような無料サービスよりも、Netflixやケーブルテレビのような有料会員制サービスの方が大きな影響を受けるのではないかと予測されます。

Netflixは、競合との差別化を図るため「ハウス・オブ・カード」「アンブレイカブル・キミー・シュミット」「デアデビル」「リディキュラス6」「ビースト・オブ・ノー・ネーション」など、自社制作の高クオリティな独占コンテンツを次々と配信しています。
これに対抗してAmazonも「The Man in the High Castle(原題)」や「トランスペアレント」など評価の高いシリーズを制作していますが、コンテンツ量が圧倒的に違うため、Netflixに押されている状況です。

AVDによって良質なコンテンツの量が爆発的に増えれば、NetflixやYouTube REDなどの有料動画配信サービスにとって、大きな脅威になりうるでしょう。
視聴者にとっては、歓迎すべき競争が起こるかもしれません。

続報があれば、今後も適宜内容を追記していきます。

【参考記事】
Amazon takes on YouTube with launch of Amazon Video Direct
Amazon Takes on YouTube and Others, Opening Video Platform to All Creators
Amazon Video Direct is a bigger threat to Netflix and HBO than to YouTube

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