SEO対策の費用の相場とサービス内容
1.SEO対策の費用はなぜわかりにくいのか
SEO対策ほど費用がわかりにくいサービスもなかなかないと思います。
直接クライアント様にご説明することもあるのですが、さまざまな場面で繰り返される
「SEOの費用って一体何なんだろう」
というクライアント様の疑問に対して、なかなか明確な答えを出すことが難しいと感じることがあります。
システム開発であれば、
「これこれこういうシステムを作るので、内訳は・・・で、500万円です」
ホームページ制作であれば、
「合計20ページのホームページを作ります、内訳は・・・で、100万円です」
といった対価の理由が説明できます。しかし、SEOではこれが実に難しいのです。
上記の例でいえば、これは人件費に対する対価だと一般的には考えられます。
しかしSEOの対価は人件費ではありません。だから明確な根拠が難しいのです。
高いから質が高く、安いから質が悪いとも言いきれないため、余計にややこしいのだといえます。
また、近年これまで一般的であった成果報酬型SEOが下火になっていることもあり、さまざまな独自サービスを打ち出しているSEO業者が増えてきました。独自サービスは比較が難しいため、判断しづらいものでもあります。
結論から述べますが、「SEO対策の費用は月間だいたいこれくらい!」と明確にいいきることはできません。
なぜそうなのか、わかりにくい料金はどのように決定されているのか、SEO業者の事情を包み隠さず説明していきましょう。
2.一般的なサービス形態と費用の目安
2−1.上位表示成功報酬型SEO
2-1-1.成果報酬型(キーワード指定)
2013年ぐらいまでは、SEOのサービス形態としてもっとも一般的でした。
2016年現在では少なくなりましたが、まだ多くみられます。成果報酬型SEOから脱却できないSEO業者の多くは廃業しつつあるので少なくなってきてはいるのですが、まだまだ主流かもしれません。
まずクライアントが検索結果の上位に表示して欲しいキーワードをSEO業者に渡して、見積もりを行います。
SEO業者は上位に表示される難易度に応じて、見積を計算してクライアントに提示します。
例を挙げてみましょう。
- 「カニ 通販」 日額成功報酬 35,000円
- 「タラバガニ お取り寄せ」日額成功報酬 3,500円
こんな感じですね(値段は適当です)。
「タラバガニ お取り寄せ」よりも、「カニ 通販」がずっと料金が高いです。これはこのキーワードの方が、上位表示の難易度がはるかに高いからなのです。
では、業者はどのようにその難易度を判断しているのでしょうか。その判断自体は、とても簡単です。
- allintitle:カニ 通販 検索結果 61,400件
- allintitle:タラバガニ お取り寄せ 検索結果 2,090件
allintitle:という検索コマンドをつけると、この後ろに入れた検索キーワードがすべてtitleに入っているページのみが検索対象となります。
titleタグに検索キーワードが入っていないページはまず上位に表示されないので、実質的な競合のページ数がこれでわかるのです。
さて、「カニ 通販」「タラバガニ お取り寄せ」では、競合ページの数が一桁違いますね。
SEO業者は、上位に表示される確率に応じて見積を提示します。これは、競合が多いから特別がんばるとか、そういう意味ではありません。
実施する施策は一緒です。上位表示される確率が違うから料金が変わるのです。
確率の用語で「期待値」という言葉があります。
期待値とは、期待した結果が出たときに得られる利益に確率をかけた値です。
これはギャンブルなどに使われる計算なのですが、例を挙げてみましょう。
コインを投げるときに、表が出れば1,000円もらえるとします。表が出る確率は50%です。
この場合は1,000円×50%で、期待値は500円となります。
何度も投げた場合に、単純計算では1回あたり平均500円もらえる計算になるという意味です。
この場合、1回あたりの賭け金が400円とかだったら絶対に得だし、510円とかだとちょっと損だという計算が成り立ちます。
成果報酬型SEOはこの理屈で値付けがなされます。
1案件平均10万円の売上にしようと計画した場合を想定しましょう。
競合の多さからみて成功確率が50%と判断されるのであれば、月額報酬を20万円に設定します。
成功確率が10%と判断されるのであれば、月額報酬は100万円に設定します。
このように設定すれば、平均で10万円の売上が確保できることになります。
実際のところは上位表示確率を正確に計算するすべはないので、あくまでも想定でしかないのですが、計算の前提となる考え方はこのようになります。
2-1-2.成果報酬型(複数キーワード指定)
「2-1-1.成果報酬型(キーワード指定)」のSEOが、非常にビジネスとして難しくなってきています。
以下の3つがその原因です。
- 上位に表示される確率が少なくなった
- 上位に表示させるために必要なコストが高くなった
- 安定して上位に表示されず一旦上位表示しても落ちることが多くなった
言い換えると「順位が上がりにくくなったし、下がりやすくなった、しかも面倒にもなった」ので儲からなくなった、ということです。
そこで考えだされたのが、複数キーワードによる成果報酬型SEOです。
これも通常の成果報酬型SEOと非常によく似ているのですが、キーワードが複数設定されるのが異なります。
例を挙げてみます。
- 「タラバガニ 通販」
- 「ズワイガニ 通販」
- 「毛ガニ 通販」
- 「モクズガニ 通販」
- 「スベスベマンジュウガニ 通販」
「この5つのキーワードすべて対策し、複数成功しても料金は一緒」というような料金体系です。
日額成功報酬35,000円の場合、5キーワードすべて上位表示に成功しても175,000円にはならず35,000円でいい、という条件です。
同じ金額で5キーワードも対策してくれるということで、安いと感じられますよね。
実はこれは、SEO業者側の都合なのです。SEO業者からみて都合のいい理由は、以下の3つです。
- キーワードを1つだけ対策するのも5つ対策するのも、コストとしてほとんど変わらない
- 成功確率が変わる。5キーワードあれば単純計算で、成功確率が5倍になる(※単純計算の場合)
- 複数のキーワードを設定することで、競合の少ない難易度の低いキーワードがいくつか混ざり、成功確率が上がる
つまり、「成功確率を上げてなんとか成功報酬を確保しよう」という苦肉の策なのです。
顧客の側からすると、競合の少ないキーワードは上位表示されてもビジネス的なメリットが少ないことが多く、そのキーワードだけ上位表示してもありがたくないわけです。
5つのキーワードがすべて同程度のビジネス的価値があればいいですが、どうしても価値の少ないキーワードが入ってしまうことを避けられません。そのため、この契約形態は顧客にとっては不利になりがちなのです。
2-1-3.固定報酬型
上位表示に成功してもしなくても、固定料金を支払う料金体系です。
SEO業者の側からすると、確実に料金がもらえます。
それだけでなく、「顧客が見た順位と自社が計測した順位が違う:といった、面倒なトラブルが発生しにくいです。また、毎月同じ額を請求するだけなので、事務的な手間が少ないという特徴があります。
事務の手間がかからないので、2、3人のごく小規模なSEO業者などがこの料金体系をとっていることが多いです。
成功報酬に比べると非常に割安な料金設定になっているのが普通ですが、それは確実に料金がもらえること、事務コストが少なくて済むことを考えると納得できるかと思います。
業者によっては月額5,000円といった非常に低額なサービスを提供しているケースもあります。
しかし、極論すれば順位が上がろうが上がるまいがどうでもいいため、最低限の対策しかしていないということもあります。
ひどいケースでは、「なにもしない」ということもありえます。
SEOというサービスは、なにをやっているかが顧客側から非常に見えにくいサービスです。そして、この種の上位表示を売り物とするサービスはほぼすべて、
「どのような施策を行っているか顧客側に公開しない」
という原則があります。
この種のサービスでSEO業者がやる手法はほぼ一択で、SEO業者が作ったWebサイトから顧客のページにリンクするだけです。リンクされているページは価値があるページだと判断する検索エンジンの性質を使って、上位にあげようとするのですね。
なぜ、顧客に公開しないのか?というと、SEO業者が作ったWebサイトのURLがわかると、そのSEO業者の顧客が誰なのか芋づる式にわかってしまうからなのです。だから、リンクを開示しないのが原則になります。
それで定額の業者の場合は、まったくリンクをしない、あるいはごく少数しかリンクしないという場合があります。それでもこの種の怠慢は顧客にはわからないという事情があるわけです。
実際は、Google Search Console(旧ウェブマスターツール)というツールを使えばどれだけリンクがされているかを確認することができるので、隠してもあまり意味はありません。しかし、リンクを確認するほどの顧客であれば、上位表示をSEO業者に依頼するといったことはしないので、隠す意味は充分にあります。
リンクすることで順位をあげようとすることは、Googleのガイドライン違反にあたります。Google Search Consoleを使ってリンクを確認するぐらいの知識のある顧客であれば、ガイドライン違反になることは知っているはずなので、この種の対策をSEO業者に依頼しないのです。
もしSEO業者の言われるがまま被リンクを購入し、順位の下落が発生している場合はこちらのGoogleペナルティ判定フローチャートを活用しましょう。
結局のところ、手を抜きたいだけ手を抜くことができる固定報酬型SEOは、値段の設定はSEO業者のさじ加減一つでどうにでもなるのです。それこそ月額数百円でもいいし、数十万円とってもなんでも構わないわけですね。
これは、本来的にはSEOではありません。SEOスパムです。
SEOの正しい意味については、この記事を参考にしてください。:「SEOとは」恒久的に安定的な集客をもたらす考え方
2-2.コンサルティング型SEO
これが最近は多いです。
昔からこれを主軸にしている業者もありますが、非常に少数派です。
リンクだけではなかなか上位に表示できなくなってきたので、これまで培ってきたSEOノウハウを提供する業務に移行している業者が多いのです。
コンサルティングといっても多岐にわたるのですが、代表的なものは以下の4種類です。それぞれのサービス内容とコスト感を説明していきます。
- Webサイトの内部をちょっと修正するといった程度のサービス
スポットで数万円程度でしょう。 - 社内のSEO担当者に継続的なアドバイスをするサービス
月額数万円〜百数十万円程度と、料金に非常に幅があります。その理由は後述します。 - CMS(コンテンツ管理システム)などのシステム開発を伴う、難度の高いSEOの技術的支援サービス
料金は高額で、月額数十万円~といった金額になります。これができる会社が非常に少なく、優秀なコンサルタントでないとつとまらないからです。 - ペナルティ回復コンサルティングサービス
Googleのガイドライン違反によって受けたペナルティを解除するサービスです。ペナルティの度合いによって料金が異なり、10万円の場合もあれば100万円までになることもあります。
2.の大きな金額差について説明していきます。
これはコンサルティングというサービスの性質上、当然だともいえます。
コンサルティングは、担当者が該当の顧客に対してどれだけ手間をかけるかによって、人件費に天と地ほどの差が生まれます。
月間3時間程度しかかけないのであれば、2万円ぐらいでもいいかも知れません。
SEO業者側の作業や分析が多岐に渡ったりして、ほぼ1人の担当者が専属で担当するということになると、100万円以上かかってしまうケースも出てくるでしょう。
また、これとは別の料金の考え方が存在します。
コンサルティングの価値というものは、費やした時間ではないともいえます。
大学入試の問題は予備校の講師ならすぐ解けるかもしれませんが、小学生だと何百時間考えても解けません。これと同じです。
知識、技能、経験を持ったコンサルタントの1時間の仕事は、素人の数ヶ月の仕事をしのぐこともあるわけです。
コンサルタントの対価は、時間に応じて支払われるわけではなく、顧客に提供した価値によるものでもあります。
顧客が長年苦しんできた問題を、凄腕のコンサルタントは数分で解決してしまうこともあります。たった数分の仕事にもかかわらず、莫大な価値を提供したことになります。このように、時間に対する対価ではなく、解決した問題の大きさに応じた対価を設定するという考え方もあります。
私の経験でも、この種の大きな問題が電話口などであっさりと解決してしまったため、対価をもらってないということも結構あります。かといって、3分の電話に対していくらくださいっていうのもなんだし・・・、という悩みは時々あります。
このように、コンサルティングは対価の考え方が2つあり、どちらの考えに立つか?によっても金額が大きく変わってきます。
コンサルティング型SEOの失敗しない選び方はこちら:SEOコンサルタントの選び方~大切なサイトを潰さないためのチェック方法~
2-3.コンテンツ提供型SEO
こちらも、近年増えてきているサービスです。
「コンテンツマーケティングEXPO」という展示会が開かれるほど、認知度が高まってきているサービスでもあります。
検索順位を上げるためには、結局のところ、ユーザーが求める情報を提供するページを作るしかありません。そのためにはコンテンツを充実させる方法がよいという考え方にもとづいて、新しいページを作るサービスを提供するSEOです。
たいていの場合、SEOというよりはコンテンツの提供業者という感じですね。
よくあるのが「100記事納品する対価として100万円」といった設定です。
この場合、1記事平均すると1万円ということになります。
確かに検索エンジンは情報が豊富なWebサイトを高く評価します。しかし、これも注意しなければならないポイントがあります。
えてしてSEO業者が作るコンテンツは品質が低いことが多い、という事実に注意する必要があります。
品質が低いのは、今までの歴史的な経緯にあります。リンクするためのブログやホームページの記事(いわゆるバックリンク用の記事)を粗製濫造してきたのがSEO業者であって、そのような記事を作るのと同じような感覚で作ってしまう可能性があるのです。
リンクで検索順位が上がらなくなってきたことによって、リンクに使うような品質よりもマシといった程度のコンテンツを顧客に提供するSEO業者は存在します。
このようなコンテンツは検索順位の向上に寄与するどころか、逆に低下の原因になることもあります。
ちゃんとした記事を作るにはそれ相応の金額が必要なのです。
何か調べごとをするユーザーに対して、他の上位表示しているWebサイトから容易に得られる情報以下のコンテンツしか作れないのであれば、コンテンツを作る意味がありません。結局は安くても効果は期待できないといえます。
ちなみにコンテンツ制作サービスの相場はまさしくピンきりで、1記事あたり千円ぐらいから数万円程度と非常に幅があります。これは在宅の内職の人であれば1文字単価0.1円で請けてくれる人もあるし、プロのライターであれば1文字10円かかる場合もあります。これがSEO業者の基本的な原価になり、この金額の何倍かにして販売されます。
1文字1円のライターに依頼するのであれば、2,000文字書かせて販売価格を5倍とすれば、1万円といった金額になるでしょう。(ちなみに、この記事は約6,700文字です)。その程度マージンを乗せないと、ライターへの記事発注仕様の作成、文章の最低限の校正といった付帯業務を入れると儲からなくなります。
取材が必要であれば取材費がかかる場合もありますし、イラストが必要であれば作成費が追加してかかります。
記事の品質をあげようとすると、そのまま金額に跳ね返ります。必ずしも金額とコンテンツの品質は比例するとは限らないのですが、原則論としてはよいコンテンツは安い金額ではできないということです。
3.まとめ
SEOの金額について書いてみましたが、幅があって相場というものは存在しません。金額そのものに意味はないということなのです。同じサービスであっても、その会社の考え方、担当者のスキルといったところに大きく左右され桁まで変わってしまいます。
安かろう悪かろうとも限らず、安くても良いサービスもあり得るのですが、手間がかかるサービスの提供を受けようとすれば確実に高いということだけはいえます。
SEOサービスは値段ではまったく判断することができず、内容でしか判断できません。
内容で判断するためにはSEOの知識が必要になるため、結局はよいSEOサービスの提供を受けようと思ったら、SEOについて少しでも知る必要が生じるのです。
SEOについて知りたい人は、下記記事を参考にしてください。