水谷隼とブラックハットSEO
卓球・世界選手権個人戦で13歳の張本智和が、リオデジャネイロ五輪銅メダルの水谷隼(27)を4-1で撃破。
そんなニュースが世間をざわつかせていますが、卓球の現状がSEOに似ているってことを書いてみましょう。
さて、卓球は実にとんでもない状況になっていることをご存知でしょうか?
陸上競技などであれば、ドーピングは厳しく罰せられます。
この種の不正がないかどうか必ずチェックは行われており、かつ発覚した場合は出場停止といった厳しい処分がくだされます。
しかし、卓球に関しては不正がまかり通っています。
卓球というスポーツはラケット及びラケットに貼るラバーの性能が大きなウエイトを占めています。
卓球用品の専門店に行くと、実に様々なラケットやラバーが売られていることに驚くにちがいありません。
ラバーは一見ただのゴムの板のように見えますが、様々な種類があり高性能なものになると高価です。
高性能なものになると1枚1万円ぐらいするものもあります。
ラケットの両面に貼る必要があるので両面合わせると2万円ぐらいになったりするのです。
しかも、困ったことにラケットと違って、ラバーは消耗品で年間に数回貼り替える必要があります。
卓球は気軽にできるスポーツだと思われがちですが、 競技として取り組むと実は金がかかるスポーツなのです。
脱線が長くなりましたが、これほどラバーが高価でも買うのは、ラバーの性能が競技結果に大きく影響するからです。
このラバーの性能を増す不正が全世界的に横行しています。
「補助剤(ブースター)」の使用。
補助剤を塗ってからラバーをラケットに貼り付けると、ラバーの性能が増し打球の速度が段違いに高まるのです。
しかし、外側からでは全くわかりません。
補助剤を塗っているかどうかは、ラバーを剥がさなければわからないのです。
(厳密にいえばラバーをはがさないでも補助剤の使用を検出する機器はあるのですが、導入されてはいません)
ルール違反のラバーのドーピングはこうして放置されているわけです。
世界のトッププロでも補助剤を使用しており、これは卓球の世界ではこの話題に触れることは一種の禁忌とされています。
2013年フジテレビの『とくダネ!発 ディレクター魂~2012最後のスクープ~』ではトッププロの馬琳にフジテレビのアナウンサーが、
「ブースターが使われていることは知っていますか?」ととんでもなくKYな質問をして、「知りません」と馬琳が不機嫌になるさまを映していました。
私もこの番組を見たときに、Good Jobだフジテレビ!と思ったものです。ここに詳しい。
日本の選手は補助剤を使うことを潔しとせず、いまだに不利な状況に置かれています。
この状況はアンフェアであるとして、この冒頭での話題の水谷隼選手はこの状況が改善されるまで、世界大会に出場しないことにしていました。
大会に出ないという選択は旬の短いスポーツ選手にとっては重い決断だったといえるでしょう。
結局、リオデジャネイロオリンピックは出場するのですが、そこで補助剤を使わずに堂々の銀メダル。けがれなきラケットでメダルを取ったという意義はとてつもなく大きいものがあります。
水谷選手の願いはただひとつ。
「すべてのプレーヤーと平等な条件でフェアに戦いたい」
だとのこと。補助剤を使うことによってどれほどラバーの性能が変わるのかは水谷選手のブログの記事に詳しいので、ぜひご覧頂きたいと思います。
この水谷選手の行動に対してITTF(国際卓球連盟)会長のアダム・シャララ氏は雑誌「卓球王国」に意見を寄稿していました。
「補助剤を使ったからといって、勝つとは限らないのだから、水谷選手は大会に出るべきだ」
という意見をはっきりと述べていました(これは意見の一部を切り取ったのでもなんでもなく、本当にそういう論旨の文章だった)。
あまりにもひどい話なのですが、これが卓球界の現実のようです。
前置きのほうが長くなりました。
ブラックハットSEOが悪いとするならば、誰が悪いのか?なのです。
ブラックハットSEOを行ってるWebサイトをGoogleが放置して、ペナルティを与えないのであればこれと同じような結果を招くのは当然の帰結でしょう。
上位の選手はみんな不正をしている。不正を行わなければ勝てない。そして、不正を行なってもなんらペナルティがない。
というのであれば、不正が広く蔓延してしまうのは当然過ぎる程当然です。
被リンクによるブラックハットSEOも以前は特段ペナルティがなかったため、不正が横行していました。
ごく一部にルールを守らない人がいるという状況ではなく、ルールを守らないのがデフォルトであれば、ルールを守るのがバカだということになってくるでしょう。
(実際日本選手が海外に行くと、「え?補助剤塗らないの?」みたいなことを言われるらしい)
実際卓球の場合は、日本だけルールを守っているのはおかしい、日本でも補助剤を使えばいいじゃないかという意見も多いです。
卓球では、選手に非があるのは当然です。しかしそれを野放しにしたITTFの責任は同様に重いです。
SEOに関してだが、ペンギンアップデートをはじめとして現在Googleは積極的にペナルティを課すようになりました。
ペナルティを科すことは副作用もあるのですが、歓迎すべきことであると考えます。
これによって行いを改めるWebマスターが多くなったわけです。
徐々にガイドラインを守るのがデフォルトであるという観念は定着しつつあります。
本来は検索順位はコンテンツの価値を競うことであり、本当のSEOの時代になってきたと思います。
今回は、日本勢である張本が水谷を破ったということで、これからけがれなきラケットが世界の強豪を撃破する時代が来る可能性が高くなりました。その結果世論が動き、補助剤は排斥されるようになるかもしれません。
卓球もSEOも同じように真に強いものが勝つという時代はそこまで来ているのかもしれません。