リターゲティング?リマーケティング?追跡型広告の基本と仕組み
現在、検索連動型に迫る勢いで活用されているweb広告が、「リマーケティング」や「サイトリターゲティング」と呼ばれる追跡型の広告です。
一度webサイトに訪問したユーザーを追跡して継続的に広告を表示させる手法で、主に見込み客を刈り取るために使用されています。
リマーケティングとサイトリターゲティングは、提供元がGoogleかYahoo!かという違いで名称が異なるだけで、機能的にはほぼ同一のものです。
ここではGoogle AdWordsが提供する「リマーケティング」と、Yahoo!プロモーション広告が提供する「サイトリターゲティング」という2つを主軸として、追跡型広告の基本を説明していきます。
追跡型広告は、SEOや他広告と組み合わせることで高いコンバージョン率を発揮します。
しかしその一方で、仕組みやユーザーに与える印象を把握しておかなければ、逆にブランドイメージを損なう結果につながることもあります。
webビジネスを成功させるために、まずはメリット・デメリットを含めた基本を押さえていきましょう。
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目次
1.追跡型広告の基本知識
1-1.関連用語の整理
1-2.「リマーケティング」と「サイトリターゲティング」の違い
1-3.その他のリターゲティング広告
2.リターゲティングの仕組み
3.リターゲティングのメリット・デメリット
3-1.リターゲティングのメリット
3-2.リターゲティングのデメリット
4.まとめ
1.追跡型広告の基本知識
「サイトリターゲティング」や「リマーケティング」などの名称で呼ばれる追跡型広告とは、「自サイトを訪れた特定のユーザーに対して継続的に表示される広告」のことです。
ユーザーが過去に閲覧したwebサイトの履歴をもとに配信され、同一のユーザーに長期間アプローチすることができます。
ここでは、まず混同しやすい用語の整理を行い、その後に特徴を説明していきます。
1-1.関連用語の定義
ユーザーの行動履歴をもとに配信される広告には、さまざまな名称があります。
冒頭で述べた通り「リマーケティング」はGoogle AdWordsが、「サイトリターゲティング」はYahoo!プロモーション広告が提供しているサービスですが、それ以外にも混同しやすい名称がいくつかあります。
まずは、それらの定義を明確にしておきましょう。
行動ターゲティング
ユーザーの行動履歴に合わせて広告を配信する手法、またはメニュー全般を指します。
閲覧履歴や検索履歴の情報をもとに、ユーザーの趣味嗜好に沿った広告を表示させるものです。
SEOに関連するwebサイトをよく閲覧するユーザーに対してはSEOに関連する広告を、カニに関連するwebサイトをよく閲覧するユーザーに対してはカニに関連する広告を配信します。
リターゲティング
自サイトを閲覧したユーザーへ継続的に広告を配信する手法、またはメニュー全般を指します。
つまり、リターゲティングは行動ターゲティングの一部だといえます。
表示される広告はバナーやテキストが主たる形式ですが、近年では動画フォーマットも広がってきています。
1アカウントで複数サイトの管理が可能であり、「コンバージョンに至らず離脱したユーザー」へのアプローチする手法としてたびたび使用されます。
リマーケティング
Google AdWordsで提供される、リターゲティング広告の名称です。
サイトリターゲティング
Yahoo!プロモーション広告で提供される、リターゲティング広告の名称です。
関連用語の関係
これらの語句は混同しやすいため、定義があいまいなまま使用している記事もまま見受けられますが、情報を整理すると下図のようになります。
今回は「自サイトを閲覧したユーザーに継続的なアプローチを行う広告」について説明していくので、「リターゲティング」という名称で進めていきます。
1-2.「リマーケティング」と「サイトリターゲティング」の違い
リターゲティング広告の代表的なものが、Google AdWordsの「リマーケティング」と、Yahoo!プロモーション広告の「サイトリターゲティング」です。
「リマーケティング」も「サイトリターゲティング」も、「ディスプレイ広告」の一種に分類されます。
ディスプレイ広告とは「GoogleやYahoo!の提携サイト上に配信される広告」のことで、配信先のwebサイトの内容を解析し、その内容に沿った広告配信を行うものです。
リターゲティングは、その中でも「webサイトの内容」だけでなく「ユーザー行動」も加味して配信する広告を選択できるようにしたものです。
Google AdWordsにおける「リマーケティング」と、Yahoo!プロモーション広告における「サイトリターゲティング」を、それぞれ図解すると下図のようになります。
リマーケティングとサイトリターゲティングは、配信元と名称が異なるだけで、基本的な機能や仕組みはほぼ同じです。
ただし、下記の3点において違いがみられます。
- 掲載サイトが違う
- 管理画面の使い方が違う
- ユーザーリストの名称が違う
ひとつずつ説明していきます。
掲載サイトが違う
GoogleとYahoo!では提携サイトが異なり、両方と提携しているサイトはありません。
そのため、Googleに出稿した広告とYahoo!に出稿した広告が同一のサイトに掲載されることはありません。
Google AdWordsの場合は、GoogleマップなどのGoogleの他サービスやYouTubeなどに広告が配信されます。一方、Yahoo!プロモーション広告の場合は、Yahoo!ニュースなどのYahoo!が持つ集客力の高いページへと配信されます。
管理画面の使い方が違う
Google AdWordsは、検索連動型広告もディスプレイ広告も、同一の画面から設定を行います。
一方、Yahoo!プロモーション広告は検索連動型広告とディスプレイ広告で管理画面がわかれているので、サイトリターゲティングの設定は「YDN」メニュー内から行います。
ユーザーリストの名称が違う
リターゲティング広告には、配信対象となる「ユーザーリスト」というものがあります。
Google AdWordsとYahoo!プロモーション広告では、この名称が異なります。
Google AdWordsの「リマーケティングリスト」は、Googleアナリティクスとの連携や配信リストの細かな設定など、多くの機能が提供されています。
Yahoo!プロモーション広告のユーザーリストは「ターゲットリスト」と呼ばれ、設定の細やかさはGoogleに一歩劣ります。
1-3.その他のリターゲティング広告
リターゲティングはGoogle とYahoo!だけが提供しているものではありません。その他の広告プラットフォームでも、同様の機能は提供されています。
配信元によって配信先や配信リストの質、細かな機能などは当然違ってきますが、いずれもユーザーの行動履歴をベースにして広告を配信しています。
とりわけ注目度が高まっているのが、ソーシャルメディア上の広告です。
中でもFacebookの提供するリターゲティングは、ユーザー数の多さやソーシャルメディアならではの細かな配信設定から、年々利用数が伸びています。
ソーシャル広告がとくに力を発揮するのが、モバイルユーザーへのアプローチです。
モバイルからのアクセスが多いwebサイトなら、リマーケティングとサイトリターゲティングだけでなく、Facebook広告もチェックしておくべきでしょう。
2.リターゲティングの仕組み
次に、リターゲティングの仕組みをみていきましょう。
リターゲティングは、サイト内に設置された「リターゲティング用のタグ」からユーザーの「Cookie(クッキー)」を取得し、条件設定に基づいて広告を配信しています。
広告主のwebサイトを閲覧したユーザーのCookieは、GoogleやYahoo!などの広告配信元のサーバーに蓄積されます。
情報を取得されたユーザーが広告枠のある他webサイトに訪問すると、広告主のwebサイトの広告が、「フリークエンシー」などの条件設定に基づいて配信される仕組みになっています。
出てきた用語を確認していきましょう。
Cookie(クッキー)
Cookieとは、一時的にwebブラウザへと情報を保存する仕組み、あるいは保存されたデータのことを指します。
一度訪問したwebサイトを再度利用するとき、ユーザーIDやパスワードなどを再度入力しなくても使用できることがありますが、これはCookieの働きによるものです。
Cookieには、ユーザーにとっては「同一の内容を再度入力するなどの手間を省く」というメリットが、サイト運営者にとっては「ユーザーの識別が可能になる」というメリットがあります。
リターゲティングはCookieによるユーザー識別によって、一度来訪したユーザーを追跡して広告を配信しています。
リターゲティング用のタグ
Cookieを取得するためには、対象サイトにリターゲティング用のタグ設置を行う必要があります。サイト全体が対象であればサイトの全てのページに、特定のページが対象であればそのページにタグを設置します。
ひとつずつ埋め込んで管理することが大変であれば、タグマネージャーを利用してもいいでしょう。
リターゲティング用のタグを設置すると、対象となるユーザーの情報がユーザーリストとして蓄積されていきます。
リターゲティングは検索連動型広告や他ディスプレイ広告と異なり、ユーザーリストが一定数蓄積されなければ配信開始されません。リストの蓄積は、対象サイトのアクセス数やリストの設定条件によって変動します。
フリークエンシー
フリークエンシーとは、「同一のユーザーに対して何回広告を表示するか?」を定めるものです。1人のユーザーに対して広告配信を行う上限回数を設定し、配信頻度を制御できます。
リターゲティング広告では、他にも「コンバージョンの有無」や「入札額」、「一日の上限額」などの設定項目があります。
フリークエンシーを含めた配信条件に従って、広告が表示されるようになります。
3.リターゲティングのメリット・デメリット
最後に、リターゲティングを活用することによって得られるメリットと、考えられるデメリットを説明します。
3-1.リターゲティングのメリット
リターゲティングには、下記のようなメリットがあります。
- コンバージョン率が高い
- ユーザーの興味関心を育成できる
- 検索連動型よりも安価
ひとつずつ説明していきましょう。
コンバージョン率が高い
基本的に、ユーザーは目的があってwebサイトに訪れます。
つまりwebサイトに訪れた時点で、サイトに掲載している情報に関して、何らかの興味関心があるといえます。
初めて訪れたサイトで「購入」や「問い合わせ」などのコンバージョンに至る行動をとるユーザーは少ないですが、サイトから離脱した後も継続的にアプローチすることで、購入意欲を引き出すことができます。
元々ユーザーが興味を持っているものをPRできるため、一般的な広告よりもコンバージョン率が高いのです。
ユーザーの興味関心を育成できる
コンバージョン率の高さは、この「ユーザーの興味関心を育成できる」というメリットと密接に関連しています。
接触回数を増やして継続的にアプローチすることで、まだコンバージョンの意識がほとんど芽生えていないライトな層に対しても、商品やサービスに対する興味関心を育成できるのです。
たとえば、あなたが肌に優しい化粧品を探していたとしましょう。
さまざまな化粧品を探している過程で、全く知らなかった小さな化粧品ブランドのwebサイトにアクセスしました。商品説明を読んで「いいな」とは思ったのですが、その時点ではブランドや商品に対する知識がなかったため、コンバージョンには至らずに離脱しました。
このままであれば、あなたはそのうちサイトにアクセスしたことも忘れ、商品のことも忘れてしまうでしょう。
しかしリターゲティング広告で継続的に何度もアプローチすることによって、徐々にブランドや商品に対する認知度や興味関心を高めていくことができます。もともと興味があって調べていたことを継続的にPRされるので、コンバージョンに至る確率は、無差別に宣伝するよりも確実に高くなります。
従来のディスプレイ広告は、コンテンツの内容のみに連動しユーザー行動は加味されていませんでした。そのため、広告表示する対象はそこまで限定できず、「認知度向上に役立つ一方、コンバージョン獲得には弱い」といわれてきました。
しかし、そこにユーザー行動を付け足したリターゲティングにすることで、コンバージョンに至るまでをフォローできる強力な手法となったのです。
検索連動型よりも安価
テレビCMや紙媒体への出稿は高額な広告予算が必要ですが、ネット広告はそれに比べるとかなり安価です。とくにGoogleとYahoo!のリターゲティング広告は、クリック単価も低めに導入できます。
一例ですが、「リスティング広告で平均CPC 120円前後のサービスが、リターゲティングでは30円未満に抑えられている」、といった場合も珍しくありません。
単価が安いだけでなく、コンバージョン率も高い傾向にあるため、総合的な費用対効果はかなり高くなります。
たとえば、クリック単価が120円で、30回に1回コンバージョンが得られるリスティング広告があったとしましょう。この場合のCPAは3,600円です。
一方、リターゲティング広告のクリック単価は30円で、しかも20回に1回コンバージョンが得られるとしたらどうでしょうか。この場合CPAは600円となり、リスティング広告と比較すると1/6の価格で成果を出していることになります。
単価が安くコンバージョン率が高い傾向にあるため、少しの工夫で大幅な費用対効果改善も可能となります。
3-2.リターゲティングのデメリット
優秀な広告であるリターゲティングにも、当然ですがデメリットは存在します。
最大限の効果を引き出すためには、懸念事項についても正確に把握しておきましょう。
リターゲティングの主なデメリットは、下記3つです。
- 消費者に不安を与える
- ブランドイメージを損なう場合がある
- 広告をブロックされる可能性がある
ひとつずつ説明していきます。
消費者に不安を与える
「接触回数を増やすことで購買意欲を高められる」というメリットには、その裏返しのようなデメリットが存在します。
ユーザーに「自分の個人情報が取られているのではないか」という不安を与えてしまう、という点です。
リターゲティング広告を配信されたユーザーからは、「自分が閲覧したサイトや関心のある商品やサービスの広告ばかりが表示されるのは、心の中を見透かされているようで気味が悪い」という意見もきかれます。
広告配信において個人を特定する情報は収集されていませんが、「プライバシーまで握られているのではないか?」という不安を持つユーザーは少なくありません。
リターゲティングで使用されるcookieには、ユーザーそのものを特定するプライバシー情報は含まれていません。
しかし、webに詳しくない人でも安心してサイトを利用できるように、プライバシーポリシーにcookieの取得やその意味を掲載するなどの配慮があった方が望ましいでしょう。
ブランドイメージを損なう場合がある
接触回数を多くすることが、必ずしも好感度上昇につながるとは限りません。
逆に、「毎回毎回同じ広告が出てきてウザい」といったマイナスの心理につながることも珍しくありません。この場合、ブランドイメージが損なわれる可能性が出てきます。
また、ここまで明確な嫌悪感が出なくても、「うまく企業にのせられてしまった」とホゾを噛むような思いをするケースもあります。
筆者も以前、「ネットで自分が好きなブランドの広告ばかりが出る。流行っているんだな、と思っていたけど、もしかしてそのサイトをよく見るから自分にだけ広告が出ていたのかな?」と、知り合いに尋ねられたことがあります。
知り合いは結局そのブランドの商品を買ったそうですが、「なんかうまくのせられたな」と苦笑していました。
苦笑いぐらいのニュアンスならいいのですが、バランスを間違えるとブランドイメージの低下につながりかねないことは意識しておきましょう。
「しつこい」「付きまとわれて迷惑だ」と思われてしまっては、逆効果でしかありません。
仕組みの解説で触れたように、リターゲティングには、同一ユーザーに広告表示する上限回数を設定できる「フリークエンシー」という機能があります。
CTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)を確認しながら、ユーザーから迷惑がられないよう日々調整するようにしましょう。
広告をブロックされる可能性がある
広告配信のテクノロジーは日々進歩していますが、一方で、広告をブロックするテクノロジーも進歩しています。
たとえば、iOSのSafariでは、デフォルトでサードパーティーCookieを許可していません。
ですから、行動履歴を追う広告配信は理論上不可能になります。
(※ただし、実際には広告配信にサードパーティーCookie以外も使用しているらしく、リターゲティングの配信は確認できています。)
また、「アドブロック」のような広告を消すツールも普及し始めています。
これらは、広告に嫌悪感を示す消費者が多いため進歩している技術です。
広告を配信するのであれば、こうした逆風も認識しておいた方が良いでしょう。
4. まとめ
ユーザーの行動に合わせ、興味関心を高めてコンバージョンを獲得できる「リターゲティング広告」。
今回は、もっとも使われているGoogle AdWordsの「リマーケティング」とYahoo!プロモーション広告の「サイトリターゲティング」を中心に、その違いと基礎的な知識を紹介してきました。
文中でも述べた通り、広告効果を高めるにはユーザーリストの設定が大切になります。
これに力を入れつつ、メリットとデメリットを踏まえて配信の調整を行い、費用対効果を最大まで高めていきましょう。