最初が肝心!リスティング広告で成功するための目標設定
デジタルマーケティングがうまくいかないとき、目標設定がきちんとされていないことが多々あります。
修正や変更のしやすさがリスティング広告の代表的なメリットですが、目標がきちんと定められていないと、その利点を活かしきることができません。ただ目先のクリック単価やコンバージョン数を追うだけで、成果が伴わない運用となってしまいます。
この記事では、リスティング広告運用における初期目標の立て方を詳しく解説していきます。
リスティング広告は集客の一手法であって、それのみで考えるべきものではありません。他のマーケティング手法との戦略的な運用が、絶対的に必要となってきます。
リスティング広告を始める前の方も既に運用中の方も、目標設定がきちんと行えているかどうか、ぜひチェックしてみてください。
目次
1.まずはマーケティング全体を見る
1-1. 「Webマーケティング」から「デジタルマーケティング」へ
1-2. トータルの予算からリスティングの予算を割り出す
1-3. リスティングの有効性を考える
2. リスティング広告の目標設定
2-1. CPCよりCPAを重視する
2-2. コンバージョン数を想定する
2-3. 予算設定の公式
3. 取引の性質毎に考えるべきポイント
3-1.ECサイト|LTVを意識する
3-2.高額取引サイト|基本公式を使用する
3-3.BtoBサイト|成約率を加味する
4.開始後はPDCAを意識する
4-1.なぜPDCAが重要なのか
4-2.具体的なチェック項目を考えておく
4-3.アクセス解析を活用する
5. まとめ
1.まずはマーケティング全体を見る
広告はマーケティングの一部です。
とくに日本ではマーケティングの大部分を広告が占めているので、リスティング広告の目標設定もマーケティング全体から考えていく必要があります。
1-1. 「Webマーケティング」から「デジタルマーケティング」へ
昨今、「Webマーケティング」ではなく「デジタルマーケティング」という言葉が使われ始めていることにお気づきでしょうか。
これは、Web広告やSEOなどの手法を単独で考えているだけでは、もはやビジネスを成長させることが不可能になってきたからです。
Webマーケティングとは、端的に述べて「WebサイトやWeb広告でマーケティングを行う」という考え方でした。
しかしデジタルマーケティングは、それよりも視野の広い言葉になります。つまり、「WebサイトやWeb広告以外の手法も複合的に活用し、Web以外の手法のデジタル活用も考える」というものです。Web以外のデジタル活用というと、たとえば情報のデータベース化などが挙げられます。
リスティング広告と関係の深いSEOを例にしてみましょう。
これまではWebサイトのみを評価して検索順位を決定していたGoogleが、現実世界でも高い評価がされているビジネスを上位表示させようとし始めています。機械学習などの発達により、それは実現するだろうといわれているのです。
また、これまでリスティング広告では、広告文から誘導されてくる最初のページ「ランディングページ」が重視されてきました。
現在でもランディングページの重要性は変わりませんが、それだけでなく自社のビジネス全体まで視野を広げる必要性が指摘され始めています。
これからリスティング広告運用を始めるのであれば、こういった傾向も踏まえて目標設定をしていく必要があります。
「リスティング広告はリスティング広告」と単品で考えるのではなく、まずは自社ビジネスにおけるリスティング広告の役割を考えておきましょう。
1-2.トータルの予算からリスティングの予算を割り出す
中小企業の場合、Web、あるいは広告という形で大枠の予算が設定されていることがあります。こんな時には項目を細分化して、リスティング広告にかけられる予算を把握しておく必要があります。
仮にWebの予算として月額150万円与えられていたとしても、そこにはサイトの運営費も含まれています。
Webサイトは日々更新していくものですから、運営費がゼロという事はありません。
仮に50万円を運営費とすれば、リスティングにかけられる予算は最大で100万円になります。
また広告予算として取ってある場合、アフィリエイトなど他の広告も出稿していれば、その分を差し引いたものがリスティング広告で使える最大予算になります。
このように、全体予算の中の一部としてリスティング広告を考えていきましょう。
1-3.リスティングの有効性を考える
ある調査によると、中小企業が効果を実感しているマーケティング施策の上位にリスティング広告がありました。
ソウルドアウト|マーケティング担当者350名に意識調査を実施
http://www.sold-out.co.jp/news/press/post-3889/
「効果を実感しているマーケティング施策とは?」という質問に対して、大企業では「記事広告の出稿(ネイティブ広告)」や「ソーシャルメディアマーケティング」などが上位に挙げられていたので、これは特徴的な結果といえます。
リスティング広告がひと昔前のように突出して安価な施策ではなくなったとはいえ、ネイティブ広告などに比べれば遥かに少額から始められ、コントロールもしやすいという点からこの傾向は今後も続くでしょう。
とはいえ、常にリスティング広告が一番の選択肢とは限りません。
たとえばBtoBのビジネスでは、展示会に出展しSFA(Sales Force Automation|営業活動を支援するシステム)を活用した方が成果を出せた、という場合もあるでしょう。
また、資本力の桁違いな競合がいて、リスティングで上位表示をさせる事はほぼ不可能であるケースもあります。こういった場合、適切なターゲット層のみを誘導し、CVR(Conversion Rate|コンバージョン率)を高められるようにWebサイトのリニューアルをした方が効果的であるかもしれません。
「集客はリスティング広告に任せればいい」などと安易に考えず、自社のマーケティング全体を見て最良の選択を行うようにしましょう。
2.リスティング広告の目標設定
ここから先は、リスティング広告を行うと決めた場合の目標設定について解説していきます。なるべく実践に基づく形にしているので、自社のビジネスに当てはめて考えてみてください。
2-1. CPCよりCPAを重視する
最初に、ここで使う「CPC」「CPA」という基本用語のおさらいをしておきましょう。
CPC|Cost Per Click
広告1クリックあたりに発生する金額。クリック単価ともいいます。
CPA|Cost Per Acquisition
広告で1件の成果を獲得するのにかかった金額。成果とは顧客獲得を指すことが本来の意味ですが、注文や予約、資料請求などを含めた広い意味で使われています。
インターネットを利用したマーケティングのメリットは、こうした指標を使った効果測定がやり易い、という点にあります。
リスティング広告の場合だと、入札したキーワードの貢献度を金額として把握することができます。この貢献度がCPCやCPAになります。
以前はCPCもよく使われていましたが、現在はCPAを追うことが多くなっています。
クリック毎の単価よりも、実際の成果に対する費用の方が重視されるようになったためです。1件のコンバージョンを獲得するのにいくらかかったかで広告の運用方法を評価し、改善につなげていくのです。
CPAを計測するためには、Webサイトへのコンバージョンタグ設置が必須です。
もし「商品購入」や「サービス申込み」などのアクションがない場合は、目標のページへ誘導した数をコンバージョンに設定するようにしておくといいでしょう。
担当者にとっては、予算が日々消化されていくのでCPCも気になるところです。
しかし、広告効果を評価する指標となるのは、実際の成果をもたらしたCPAの方です。
仮に「CPCが50円でCPAが500円」のキーワードと「CPCが10円でCPAが3,000円」のキーワードがあれば、前者が評価される、ということですね。
2-2.コンバージョン数を想定する
目標を定めるもっとも初歩的な方法は、コンバージョン数の想定です。
仮に月に500万円の売上が必要で、そのすべてをWebから獲得するとしましょう。
この場合、平均単価が1万円であれば、月500件の申込みが必要です。
売上の50%が原価だったとすると、広告の予算上限は、原価を差し引いた250万円となります。しかしこれではまったく利益がでないので、現実問題としてこうした予算設定は考えられません。
予算を算出する場合には、原価とは別に、必要な利益も必ず確保するように考えていきます。
利益をどの程度に設定するかは、販売する品によって大きく異なるので一概にはいえません。自社の商品やサービスに適した金額を設定しましょう。
2-3.予算設定の公式
ここまで説明してきたことを踏まえて、予算設定の公式を解説していきます。
リスティングの広告予算を算出するためには、まず目標CPAを出す必要があります。
もっともシンプルな目標CPAは、下記の数式で求められます。
目標CPA=平均購入単価-平均原価-必要利益
必要利益とは、ここでは「コンバージョン1件につき必ず確保するべき最低限の利益」と捉えておきましょう。
ここで出た目標CPAを基にして、リスティング広告の全体予算が算出できます。
リスティング広告予算=目標CPA×目標コンバージョン数
平均単価が2,000円、平均原価が1,000円、必要利益を200円とすると、目標CPAは2,000円-1,000円-200円=800円になります。
目標コンバージョン件数が月間500件とすると、800円×500件でリスティング広告予算は40万円ということになりますね。
これがごく基本的な目標設定の方法です。
3.取引の性質毎に考えるべきポイント
ここからは、基本の公式をビジネスやWebサイトの形態に合わせて応用し、それぞれに適切な予算を考えていきましょう。
3-1.ECサイト|LTVを意識する
ECサイトの目標CPAは、「平均購入単価-平均原価-必要利益」という基本の公式通りだとよくいわれます。
しかしECの市場が成熟した現在は、もう少し進んだ考え方が必要です。
まずは次のふたつの用語を押さえてください。
CRM(Customer Relationship Management|顧客関係管理)
顧客データを管理し、それをもとに関係性を深めていく手法、またはそのシステムです。
以前から重視されていましたが、Webシステムの広がりで爆発的に普及しました。
LTV(Life Time Value|顧客生涯価値)
顧客がその事業者に対してどれぐらいの利益をもたらし続けてくれるか、という指標です。
これを上昇させるために、「利益率を上げる」「長く関係を維持し続ける」など、さまざまな施策が取られます。
CRMが当たり前になったことで、以前よりもLTVが重視されるようになってきました。
一度買って終わりではなく、戦略的に関係を継続させていくことが、ECサイトを成功させるために重要な要素となってきているのです。
消費者にとってもっともハードルの高い行為が、最初の購入です。利用したことのないWebサイトを利用して使ったことのない商品やサービスを購入する、という行為は、心理的な負荷が大きいものです。
ですから、事業者側からの視点でみれば、まずは消費者にこのハードルを越えてもらうことが重要です。
顧客獲得の予算が必要となるのは、この「最初の購入=新規顧客開拓」のタイミングです。
苦心しながらも新規で顧客獲得をし、そこからリピーター化を促進することで、継続した利益を見込めるようになるのです。
ただし、このビジネスモデルで基本式を使うと、目標CPAが低額あるいはマイナスになってしまいます。そこで別の公式を使います。
LTV型の目標CPA={初回平均単価+(平均単価×継続率)}×粗利率
ここでいう粗利率とは「平均購入単価から平均原価と必要利益を引いた後に占める割合」のことです。
この公式は、できるだけシンプルにするために、新規獲得の経費を一度の継続で回収できる設定にしてあります。長期のLTVで考えると、複数回継続、あるいは平均単価を上げることなどを考慮した、より複雑な計算式になることは覚えておきましょう。
では例として、初回平均単価と以降の平均単価を同じ2,000円と想定した例で考えてみましょう。
初回購入から40%の人が継続すると仮定します。
平均原価を1,000円、必要利益を500円としてみると、粗利率は25%になります。
これを前述の公式に当てはめてみましょう。
{2,000円+(2,000円×40%)}×25%=700円
仮に初回購入だけで目標CPAを算出すると500円ですが、継続分を加味する事で200円の上乗せができました。
3-2.高額取引サイト|基本公式を使用する
宝石や不動産といった高額な取引を生むサイトでは、リピートはあまり見込めません。
そこで一回の購入で十分な利益が出るように、基本の公式を使います。
目標CPA=平均単価-平均原価-必要利益
平均単価を30万円、平均原価を15万円、必要利益を5万円とすると、目標CPAは10万円になります。
リスティング広告を始めると、「不動産分野では推奨入札額が数千円になっている」など、高額なワードも多くあるのがわかってきます。
クリック単価が1,500円だった場合、100回クリックされるとそれだけで15万円の広告費がかかります。
しかし、仮に不動産仲介で1,000万円の物件が売れた場合は、30万円前後の手数料が見込めます。ですから桁違いに見える広告費でも、元が取れるのです。
このように、同じスペースに表示される広告にも関わらず、業種により広告費の値が変わってくる点もリスティング広告の面白さだといえるでしょう。
単価だけを取り上げて高い安いというのではなく、自社の商材で見込める利益を考えて予算設定を行いましょう。
3-3.B2Bサイト|成約率を加味する
オンライン上だけでは、すぐに取引が完結しないビジネスも多くあります。
店舗集客やB2Bサイトの多くはそのタイプであるといえるでしょう。
エステやヘアサロンといった継続して来店してもらうタイプの店舗集客は、LTV型の目標CPAの公式で算出するといいでしょう。
しかしB2Bビジネスの場合、それでは上手な目標設定ができません。
B2Bサイトの多くは、Web上だけで取引は完了しないはずです。
その多くは、資料請求や問い合わせといったステップを踏んで、成約へとつなげていくのではないでしょうか。資料請求などは直接的な利益にはならないので、次のように成約率を加味した計算式を使う必要があります。
資料請求型の目標CPA={(コンバージョン数×平均単価×成約率)-経費-必要利益}÷コンバージョン数
ここでのコンバージョン数は、資料請求数になります。
仮に月間10件の資料請求数が見込め、平均単価50万円の商材が成約率20%だとします。
なにを経費とみるかは難しいところですが、今回は営業の人件費と仮定して月70万円を経費としましょう。その上で、月間の必要利益を10万円確保したいと考えると、下記式のようになり、目標CPAは2万円となります。
目標CPA={(10×500,000×0.2)-700,000-100,000}÷10=20,000
このケースでは、成約率の読みが大きく影響します。仮に成約率が10%しかなければ、リスティング広告を出すどころではなくなるからです。試しに計算式にあてはめてみれば、よくわかるはずです。
昨今、マーケティングオートメーションツールが盛り上がりを見せ、B2B も緻密なマーケティングへ移行する兆しをみせています。
これまで大雑把な管理しかしてきていない企業は、リスティング広告の目標設定でも読み違いに気をつけた方がいいでしょう。
4.開始後はPDCAを意識する
リスティング広告運用において、PDCAサイクルは欠かせません。
修正や変更がしやすいリスティング広告だからこそ、PDCAを意識するか否かで成果が大きく変わってきます。
目標設定の段階で、開始後のPDCAについてきちんと考えておきましょう。
4-1.なぜPDCAが重要なのか
この記事をご覧になっている方の多くはPDCAについてご存知かとは覆いますが、ここで今一度、PDCAの基本構成をおさらいしておきましょう。
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
この4項目を繰り返していくことが、PDCAサイクルです。
目標設定は「Plan(計画)」の部分であり、非常に重要なことです。
しかし実際に運用を始めたDo(実行)のタイミングになると、多くの人が「目標どおりにいかない」という悩みに直面するはずです。
ここまで説明してきた目標設定の方法は、最低限の利益を前提にした、いわば必達の目標設定です。ですから目標を下回っている場合、すぐにAction(改善)を考えなければいけません。PDCAを高速で行えるかどうかで、成否が分かれていきます。
もし目標どおりに進み、問題なく目標達成できているのであっても、より多い利益のために改善を続けていくべきです。
どんな場合でも満足することなく利益を追求できる人こそが、優れたマーケターなのです。
4-2.具体的なチェック項目を考えておく
目標の達成度合いを見ていく、つまり「Check(評価)」 にあたる業務をどう実施していくかについても、目標設定時に考えておきたいポイントです。
リスティング広告は、Google AdwordsもYahoo!プロモーション広告も、見やすい管理画面が用意されています。項目を選んでレポート出力することも可能です。
このため、実際に手を動かしての作業はそんなに多くはありません。
この空いた時間のどのタイミングでなにをチェックするのか、という具体的なチェック方法を、運用開始前にはっきりさせておきましょう。
リスティング広告のチェック項目として、たびたびKPI(Key Performance Indicators|重要業績評価指標)が挙げられます。これは成果に向かう各地点での評価指数、という意味ですが、単に「KPIを確認する」だけでは実際にチェックする段階になって困ったことになるでしょう。
「なにをKPIとするのか」というごく基本的なことから、その評価をどの程度の間隔で行うのかといったことも決めておきましょう。
リスティング広告の運用初期段階であれば、キーワードの調整も兼ねて毎日チェックしても多すぎるということはありません。
チェック項目とチェックする頻度、その手法を具体的に考えておきましょう。
4-3.アクセス解析を活用する
さて、最後にWebらしい分析方法を紹介しておきます。
無料で使えるアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」は、多くの企業が導入しているツールです。
このGoogleアナリティクスは、Google Adwordsと一体になった設計がされています。
具体的には、レポートの集客メニューの中に「Adwords」という項目が用意されているので、そこでGoogle Adwords側との連携を設定すれば細かな分析ができるようになります。Adwordsの管理画面では見られなかった直帰率などがわかるので、顧客の行動を知る最適なツールだといえるでしょう。
Yahoo!プロモーション広告でも、URLにパラメーターを付けることでデータの反映が可能になります。アクセス解析できることこそがインターネットを利用したマーケティングの強みですから、大いに活用していきましょう。
5.まとめ
目標設定のポイントは、まずは自社のビジネス全体などの大きな視点から考え始めて、徐々に目標CPAなど細かな数値を出していくことです。
大枠の段階でつまずいていると、いくら目標を立ててもうまくいきません。
ビジネスとは、一本の木のようなものです。
その木を育てるために、リスティング広告やSEOなどのさまざまな集客手法が存在しています。集客手法はビジネスを育てるための養分だといえるでしょう。
木を大きく育てるためには、まずは根っこをきちんと確認し、どんな養分をどれくらい与えれば有効なのか、きちんと考える必要があります。
適切な目標設定を行い、日々のチェックや改善を繰り返し、自社の木を大きく育てていきましょう。